骨粗しょう症イメージ

骨粗しょう症とは老化などが原因となって骨の量が減少し、もろくなって骨折リスクが高くなってしまう疾患です。骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量(骨密度)は、20〜30歳頃の若年期をピークに、歳を重ねるとともに減少していきます。この骨密度が減少をきたすことによって骨粗しょう症と言われる状態になり、背骨が身体の重みでつぶれたり、背中が曲がったり、ちょっとした転倒で骨折すると言った事態を引き起こすようになります。骨密度は50歳ごろから低下し始めます。高齢者の骨折は寝たきりの原因となるため、骨折予防が非常に重要です。そのため以下の検査を行って骨粗しょう症の診療を行います。

1. 骨密度の測定
骨の強さを測定する際の重要な尺度の1つに「骨密度」があります。当クリニックでは精確な検査ができる骨密度測定装置を導入して診断結果をお伝えしております。4か月に1回の大腿骨、腰椎等の検査をお勧めいたします。
2. レントゲン検査
主に背骨(胸椎や腰椎)のレントゲン写真を撮り、骨折や変形が無いか、また「骨粗しょう症」の有無を確認します。骨粗しょう症と他の疾患とを判別するのに必要な検査です。
3. 血液検査・尿検査
骨代謝マーカーを調べることにより、骨の新陳代謝の速度が分かります。骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず骨折の危険性が高くなっています。

女性に多い骨粗しょう症

骨粗しょう症は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下する更年期以降に特に多くみられ、高齢の女性を中心に年々増加の一途をたどっています。エストロゲンには、骨の新陳代謝に際して骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがあります。閉経して、このエストロゲンの分泌量が減少してきますと、骨吸収のスピードが速まるため、骨形成が追いつかず、骨がもろくなってしまうのです。
一方で、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒なども骨粗しょう症の原因と考えられており、最近は若い女性の骨粗しょう症も問題視されています。骨粗しょう症の原因のうち、年齢や性別、遺伝的な体質などは変えることができません。しかし、変えることのできる要素、つまり食生活や運動などの生活習慣を見直すことにより予防と改善が可能です。

1. 食事療法

骨粗しょう症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやタンパク質、および骨のリモデリングに必要なビタミンD、Kなどです。カルシウムは食品として700〜800mg/日、ビタミンDは400〜800IU/日、ビタミンKは250〜300μg/日を摂取することが推奨されています。これらの栄養素を積極的に取りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。骨粗しょう症の人が避けるべき食品は特にありませんが、リンやカフェイン、アルコールなどの摂り過ぎには注意しましょう。過ぎた量のアルコールは、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウム排泄量を増やしたりします。カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。リンを摂り過ぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまい、骨密度の減少を招きます。

2. 運動療法

骨は運動をして負荷をかけることで丈夫になります。さらに、筋肉を鍛えることで身体をしっかり支えられるようになったり、バランス感覚がよくなったりし、ふらつきが少なくなって転倒防止にもつながるため、運動療法は骨粗しょう症の治療には欠かせません。骨量を増やすには、ウォーキングやジョギング、エアロビクスなどの中程度の運動が効果的で、激しい運動をする必要はありません。散歩などを毎日、あるいは週に数回でもよいので長く続けることも重要です。

3. 薬物療法

症状が進んだケースでは、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。現在使われている薬には、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成(新しい骨を作る)を助ける「骨形成促進剤」、骨の栄養素である各種ビタミン(D、K)剤などがあります。また、腰や背中などに痛みがある場合は、痛みを取る薬も用いられます。
どんな薬を選び、いつから治療を開始するかについては、個々の患者さんの年齢や症状の進み具合などを考え合わせながら医師が判断します。現在、治療に用いられている薬には、主に以下のようなものがあります。

① ビスフォスフォネート製剤
骨吸収を抑制することによって骨形成を促し、骨密度を増やします。骨粗しょう症の治療薬のなかでも特に有効性の高い薬です。ビスフォスフォネートは腸で吸収され、すぐに骨に届きます。そして破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制するのです。
骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて、密度の高い骨が出来上がります。
② SERM(サーム:塩酸ラロキシフェン)
骨に対しては女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨密度を増加させますが、骨以外の臓器(乳房や子宮など)には影響を与えません。
③ 副甲状腺ホルモン製剤
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。専用キットを用いて1日1回自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬があります。複数箇所の骨折が起こっている、骨密度が著しく減少しているなど、重症の患者さんに対して用いられます。
④ 活性化ビタミンD
カルシウムの腸管からの吸収を増やす働きがあります。また、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。
⑤ ビタミンK
ビタミンK2は骨芽細胞に作用することで骨形成を促し、同時に骨吸収を抑制することで、骨代謝のバランスを整え骨の質を改善します。骨折を減らす効果が認められています。
⑥ カルシトニン製剤
骨吸収を抑制する作用があり、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症に伴う背中や腰の痛みに用いられます。
⑦ 抗RANKLモノクローナル抗体
破骨細胞は、骨芽細胞と結合することによって骨を壊す細胞になります。この結合する部分(RANKL)をブロックすれば、結合することができなくなるため、骨は壊れなくなります。このようにして骨が溶け出していく過程が遮断され、骨粗しょう症を治療することができると考えられています。なお、この薬の特徴は、6か月に1回の皮下注射で済む点です。ただし、血中のカルシウム濃度が下がりがちなため、ビタミンD製剤やカルシウム製剤を毎日服用していただくようになります。